「治験コーディネーター(CRC)に転職したいけれど、どこに応募すればよいかわからない」と悩んでいる方は少なくありません。ただ、「最初に見つけたところ」や「なんとなく」といった曖昧な理由で選ぶのではなく、自分の希望や条件に合った応募先を選ぶことが重要です。
この記事では、治験コーディネーター(CRC)の応募先の選び方について、求人状況、会社概要、労働条件、仕事内容という4つのポイントに分けて詳しく解説します。
治験コーディネーター(CRC)の応募先の選び方
求人状況から応募先を選ぶ
求人の有無
求人がない場合、当然ながら応募することはできません。まずは、どのSMOや病院が求人を出しているかをしっかりと確認しましょう。
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CRCばんくに問い合わせるなどして、できるだけ正確な情報を入手するように努めましょう。
募集人数
募集人数は何名かを確認します。募集人数が多いほど、採用される可能性は高まります。
募集人数を事前に把握しておくことで、転職活動をより戦略的に進めることができ、治験コーディネーター(CRC)への転職の成功確率を高めることができます。
逆に、募集人数が少ない求人は採用されるチャンスが小さいと予想されるため、応募先を増やしたり、他の要素でアピールしたりするなどの対策が必要になります。
応募条件
- 医療資格の種類
求人情報に記載されている必要な資格に、自分が持っている医療資格が含まれているかを確認しましょう。病院の求人では、薬剤師や看護師など特定の資格を必須とすることが多いです。
また、管理栄養士や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、介護福祉士、歯科衛生士などの資格を持っている方は、応募できる求人が限られることがあるため、しっかりと確認しておきましょう。自分が持っている医療資格で応募できるかどうか分からないときは、CRCばんくまでお問い合わせください。
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- 年齢
治験コーディネーター(CRC)未経験者は30~39歳まで、治験コーディネーター(CRC)経験者は45~55歳までが採用されやすい傾向にあります。
ただし、管理職経験があるなど優れた経歴を持つ方や、採用が予定通りに進まなくて困っている応募先では、年齢に関係なく応募可能な場合もあります。不明な点があれば、CRCばんくまでお問い合わせください。
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- 臨床経験年数
2年以上または3年以上の臨床経験が必要とされることが多いです。ただし、一部のSMOや病院では、臨床経験が2年未満でも応募できる場合があります。臨床経験が応募条件を満たしているか分からない場合は、CRCばんくまでお問い合わせください。
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- CRC経験の有無
応募条件に「治験コーディネーター(CRC)経験が●年以上」と記載されている場合、未経験の方は応募できません。別の求人を探しましょう。
- 入社時期
入社時期が「●月のみ」「●月まで」「●月以降」などと限定されている場合、指定された時期に入社できる必要があります。難しい場合は、別の求人を探しましょう。
- 研修期間と研修場所
導入研修の期間はSMOや病院によって1~2日から1ヶ月程度までさまざまです。研修への参加は必須とされることが多いため、研修期間中に参加できない日がある場合は、応募が難しくなる可能性があります。
また、自宅から通えない地域で研修が行われる場合は、宿泊して研修へ参加することを求められる場合が多いです。
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大手SMOの導入研修の場所・期間 | ||
企業名 | 研修場所 | 期間 |
EPLink | 東京と最寄り支店 | 3~4週間(東京か最寄り支店で1週間、最寄り支店で2~3週間) |
シミックヘルスケア・インスティテュート | 東京 | 2~3週間 |
ノイエス | 最寄り支店 | 3~4週間 |
アイロムIR | 最寄り支店 | 3~5日 |
アイロム | 最寄り支店 | 3~5日 |
コロナ以降は東京で研修を行わない応募先が増えています。
コロナ以降はWEB会議システムを利用して、東京ではなく所属支店や自宅などで研修を行う応募先も増えています。
選考方法
- 適性検査の有無
多くのSMOや病院では適性検査を実施しています。この適性検査は、性格検査と能力検査の2種類にけられます。また、作文やレポートの提出を求められることもあります。
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- CRCの適性検査の種類
また、勉強が苦手だったり、試験を長い間受けていない方は、能力検査を実施するSMOや病院に応募することをためらう傾向があります。
- 面接回数
中途採用の場合、SMOや病院では1~3回の面接が一般的です。多くの応募者は面接回数が少ないほうが好ましいと考えます。在職中の方は、面接のために有給休暇を取得したり、シフトを調整するなどの手間がかかります。そのため、面接回数が少ないほうが転職活動をスムーズに行えると言えます。また、選考結果が早く分かれば、転職活動の計画も立てやすくなります。
一方、複数回の面接を受けることで、より多くの情報を得ることができて、納得できる応募先を選びやすくなるというメリットもあります。しかし、そのように考える応募者は少ないです。
面接回数が1回の場合が多いSMO
・EPLink
・シミックヘルスケア・インスティテュート
・アイロム
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- CRCの面接の回数
会社・病院の概要から応募先を選ぶ
規模
会社・病院の規模は、大きい方が有利な場合が多いです。特に治験コーディネーター(CRC)未経験者は、小規模なSMOやクリニックを選ぶことは避けた方が良いでしょう。なぜなら、労働条件や福利厚生、教育体制など多くの点で、大きな規模の会社や病院の方が良いことが多いからです。
一方で、治験コーディネーター(CRC)経験者は、小規模なSMOに転職することで給与が増えたり役職が付く場合もあるため、あえて小規模なSMOを選ぶという選択肢もあります。
ただし、規模が大きい会社や病院であっても、雇用形態が非正規である場合や、福利厚生が制限される場合があることには注意が必要です。
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事務所の有無(SMOのみ)
自宅から通いやすい場所に事務所があるSMOをおすすめします。治験コーディネーター(CRC)は施設への直行直帰が多く、リモートワークの機会も増えてきたため、事務所への通勤頻度は減少傾向にあります。
しかし、近い場所に事務所があれば、打ち合わせや事務作業がしやすいだけでなく、人間関係も築きやすくなることが多いです。
CRCの人数
治験コーディネーター(CRC)の人数は多い方が望ましいです。なぜなら、多くの先輩からアドバイスやサポートを受けられるだけでなく、急な休みが必要になったときに代替人員を確保しやすいからです。
逆に、治験コーディネーター(CRC)の人数が少ない場合は、限られた先輩からしかアドバイスを受けられず、治験コーディネーター(CRC)としてのスキルアップが遅くなる恐れがあります。また、急な退職者が出た場合に業務量が急増するリスクも高くなります。
将来性、成長性(SMOのみ)
順調に成長している会社は、将来性が高いと判断できるためおすすめです。逆に、業績不振で規模が縮小している会社は、将来的に労働環境が悪化する可能性や、会社の存続リスクを考慮する必要があります。
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- SMOの成長性・安定性
雰囲気
労働条件から応募先を選ぶ
給与
- 初年度の給与額
初年度の給与は、転職先を選ぶ際の最も重要な要素の一つです。前職の年収を維持したいと考える応募者は多いでしょう。提示される給与額について、事前にある程度把握しておけば、転職活動をより効率的に進めることが可能です。
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- 給与の上昇率
給与を判断する際には、初年度の額だけでなく、上昇率も重要です。特にSMOでは、病院と比較して給与の上昇率が高い場合があります。
初年度の給与がやや低い場合でも、上昇率が高ければ、中長期的な視点で見た収入は増えると言えます。短期的な視点だけでなく、中長期的な視点からも応募先を選択することが大切です。
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- 各種手当(家賃・住宅補助、扶養・育児・家族手当、CRC認定手当、医療資格手当など)の有無
一人暮らしの場合は、家賃手当や住宅補助などで実質的な給与額が増えることがあります。また、扶養家族がいる方には扶養・育児手当、CRC認定やGCPパスポートなどのCRC関連資格を持つ方にはCRC手当、看護師や臨床検査技師などの資格を持つ方には医療資格手当などが支給されることがあります。
給与金額がほぼ同じ場合でも、自身のライフスタイルや資格に合わせた手当がもらえる応募先を優先して選ぶこともできます。
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休日・残業
保育園や学童の迎え時間に仕事が終わらなかった場合、本人に代わって迎えに行ける人がいると条件を満たせます。そのような育児サポートがない場合、未経験者が治験コーディネーター(CRC)へ転職できる可能性は低くなります。
通勤時間、通勤手段
- 通勤時間
通勤時間は短い方が望ましいとされています。SMOの場合、担当する施設によっては通勤時間が長くなることもありますので、注意が必要です。
事前に通勤時間を確認する方法としては、
・主要な提携施設の場所を確認する
・他の社員の平均の通勤時間を確認する
などがあります。
SMOの通勤時間は、東京や大阪など人口が多い都市部では平均30~40分と短く、人口が少ない地域では平均40~50分と長くなっています。地方にお住まいの方は、面接で確認しておくと良いでしょう。
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- CRCの通勤時間
- 車通勤の可否
車での通勤を希望する方も多いですが、車通勤を認めていないSMOや病院も少なくありません。車での通勤を希望する場合は、事前に確認しておくことが重要です。
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- CRCの車通勤
福利厚生
- フレックスタイム制の有無
出退勤の時間を柔軟に決められるフレックスタイム制が導入されている場合は、働きやすさが向上します。特に育児中の方にとっては、仕事を早く終わらせて帰ることができるため、非常に価値ある制度だと言えます。
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- フレックスタイム制とは?
- 時短勤務
時短勤務の延長制度がある場合、育児と仕事の両立がしやすくなります。子どもが小さい時期には予期せぬトラブルも発生しやすいため、時短勤務の延長が可能な場合、より柔軟に対応できます。
ただし、時短勤務制度を利用するためには、一定の勤続期間が求められる場合が多いため、転職直後から時短勤務を利用したい方は注意が必要です。
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- CRC未経験でも時短勤務で働けますでしょうか?
- 育児休業取得実績
育児休業の取得実績が多い場合は、気軽に育休を取得しやすい環境であると言えます。
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- CRCの福利厚生・休日
- 退職金制度の有無
退職金は給与の一部を後で受け取る制度であるため、必ずしも転職者にとって有利とは限りません。退職金制度がない場合でも、その分の給与が前払いされている場合は逆に有利だと言えます。退職金制度の有無については、過度に神経質になる必要はありません。
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- 退職金の種類
雇用形態
半年から1年間は契約社員として採用する病院やSMOも存在します。正社員と契約社員を比較した場合、雇用期間が無期限である正社員の方が、生活の安定性が高く人気があります。
ただし、契約社員でも、契約終了後に正社員への登用を前提としている場合は、過度に不安になる必要はありません。多くのSMOでは、正社員への登用率は高い傾向にあります。また、契約社員の方が、残業や仕事のプレッシャーが少ないなど、働きやすいと感じる方もいます。
大学病院や国公立病院では、3年や5年といった雇用期間の制限が設定されていることがあります。そのような場合、雇用期間が終了すると更新されず、雇用関係が終了することが多いです。
再び転職活動を行う際には、年齢的な制約や転職回数の増加などの理由で、転職が難しくなることも考えられます。そのため、雇用期間に制限がある場合は、契約期間の終了後のキャリアプランも考えておく必要があります。
初年度の雇用形態が正社員の可能性が高いSMO
教育研修
大手のSMOでは、高水準の研修が提供されています。研修期間が長いほど、内容が充実していると考えられます。
しかし、地方に住んでいる方や育児中の方にとっては、長期間の研修に参加することが難しい場合もあります。そのため、自分の状況に合わせて応募先を選ぶことが重要です。
中小規模のSMOや病院・クリニックでは、研修期間が短い場合や、OJT(現場での研修)が主体になっている場合もあります。
企業名 | 教育内容 |
EPLink | インターネットを使用したeラーニングの種類が豊富なことが特徴。人材開発グループに専任スタッフ、各支店・事業所に教育研修担当者を配置。 |
シミックヘルスケア・インスティテュート | 導入研修の期間は約2~3週間と長い。その後も各種勉強会・事例検討会・国内外学会参加を定期的に開催している。 |
ノイエス | 導入研修の期間は約2~4週間と最も長い。eラーニングも積極的に活用。その後は提携先の医療機関でOJT(現場での教育)中心。英語研修などグローバルに活躍できるCRCを育成。 |
アイロムIR | 導入研修の期間は約3~5日間。その後はOJT(現場での教育)中心。1~2ヶ月に一度、定期的に本社でフォローアップ研修を開催。 |
アイロム | 新卒などCRC未経験者の教育に定評あり。独自のCRC社内認定制度を設定。オーストラリアへの短期ビジネス留学も可能。 |
特に臨床経験が少ない方は、研修体制が整っている大手のSMOを選ぶことで、転職失敗のリスクを減らすことができます。
仕事内容から応募先を選ぶ
領域
- オンコロジー(がん)
難易度が高い反面、大きなやりがいも感じられる領域です。現在、最も多くの種類の治験が実施されている領域として知られており、治験コーディネーター(CRC)として最新の知識やスキルを習得する絶好の機会となります。臨床経験が豊富な看護師や、積極的にキャリアアップを目指す方にはおすすめの領域です。
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- オンコロジー(がん)領域の仕事内容
- CNS(中枢神経系)
データの評価や信頼性の確保が難しいため、治験のやり直しが多く発生する領域です。主要な領域の一つであり、看護師から臨床検査技師まで、一度は経験しておきたい領域です。特に、臨床心理士や理学療法士は、この領域での活躍が期待されます。
うつ病やアルツハイマー病などの治験には、治験コーディネーター(CRC)の性別に制限はありませんが、統合失調症などの治験では男性の治験コーディネーター(CRC)が望ましい場合もあります。
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- 糖尿病
オンコロジーと比べて要求される症例数が多いため、治験コーディネーター(CRC)は迅速に試験を実施する能力が求められます。看護師だけでなく、管理栄養士や臨床工学技士もこの領域での活躍が期待されます。また、土曜日の出勤が必要な場合が多いことも特徴です。
- アレルギー
季節や時期に左右されることが多く、治験の内容も比較的シンプルであるため、臨床経験が少ない方でも取り組みやすい領域と言えます。
資格
- 看護師
多くのSMOや病院へ応募が可能です。ただし、一部の病院では応募ができない場合があります。
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- 臨床検査技師
多くのSMOや病院へ応募が可能です。ただし、一部の病院やSMOでは応募ができない場合があります。
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- 保健師
多くのSMOや病院へ応募が可能です。ただし、一部の病院では応募ができない場合があります。
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- 薬剤師
多くのSMOや病院へ応募が可能です。
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- 管理栄養士
一部のSMOや病院へ応募が可能です。
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- 臨床工学技士
一部のSMOや病院へ応募が可能です。
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- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
一部のSMOへ応募が可能です。
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- MR
一部のSMOへ応募が可能です。
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- 臨床心理士
一部のSMOへ応募が可能です。
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- CRA
多くのSMOや病院へ応募が可能です。ただし、一部の病院では応募ができない場合があります。
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よくある質問とみんなの回答
- Q
- 治験コーディネーターの就職先の選び方。
- A
-
質問者さまの住んでいる地域等にもよりますが、SMOを選択するうえでいくつかポイントがあります。
SMOにはクリニックに強い企業と、大学病院等に強い企業があります。
私の勤めていたSMOはクリニックに強かったため、提携数のクリニックが多く、様々な疾患における治験を経験することができました。また、一人で多くの施設を掛け持ちすることも多かったため、移動が多かったです。(午前中はAクリニック、Bクリニックに移動して、午後は別の場所のCクリニックに移動、など)私にとっては移動が多いことで気持ちを切り替えたり、息抜きもできたので割とよかったかなと思っています。
一方、大学病院等に強い企業ですと、基本的にはその病院に常駐してサポートを行っていくことが多いかと思います。ここでは比較的クリニックより重症疾患等を取り扱う場合が多いような気がします。ひとつの疾患について割と長く臨床試験を行う場合が多いため、経験する疾患数としては少ないかもしれません。
また、CRCとして円滑に業務を行うには院内スタッフとの関係性はかなり重要になってきます。常駐型のSMOだと、院内スタッフさんと一度いい関係を築きさえすれば、CRCとしてはその後も働きやすくなるでしょう。逆に言うと、そこで関係性をうまく築けなければ所詮CRCは病院にとっては外部の人間ですし、その後働きづらくなります。その点の人間関係においては、新しい人間関係を次々築いていくことはクリニックでも大変ですが、大学病院よりかは気は楽かと思います。
以上のことを参考に、自分の優先したいこと(様々な数多くの疾患数を経験したいのか、重症疾患を経験したいのか、常駐型なのか、移動型なのか、給与面、転勤の有無)を整理して、各企業の強みは何なのかを考えつつSMOを選択するとよいかと思います。
- Q
- 大手SMOと中小SMOの違いは何でしょうか。
- A
-
複数社の企業、いわゆる大手及び中小のSMOでの就業経験よりお答えします。
CRCとしての就業スタイルは、大手・中小の間に大きな違いはありません。
教育体制(特に新人教育)では、大手の方が組織化・体系化されており座学研修や資料は充実しているケースが多い反面、OJTではひとりの新人に大勢の先輩CRCが関わるため粗雑な面があるかもしれません。中小では、座学の充実度は社ごとに差がありますが、会社全体で新人を育てようとする意識が高く、個々の能力に応じたきめ細やかな教育体制をとっている傾向があるようです。
また、いちCRCとして働く上での会社組織との関わりについては、大手は“出来上がったレールに乗って仕事をする”という安心感がる反面、例えば新しい発想で取り組みたい場合や疑念や不満が生じた場合にその声が届かないことがしばしばです。中小は、組織内の風通しがよくコミュニケーションが取りやすい反面、時として一個人が他に及ぼす影響力が大きくなりすぎ混乱を招くこともあり得ます。これらは本業界に限ったことではないことは言うまでもありませんが。
近年、大手・中小の区別なく合併・吸収合併が繰り返され、業界内再編が行われる一方、独自の社風や特色を売りに新規設立されたり、合併することなく成長を続ける企業も見受けられます。
ご質問の趣旨からは外れるかもしれませんが、転職活動では、「大手」「中小」という区別に着目して検討する方法もありますが、SMO業界では、企業規模とは関係なく特色とこだわりを持って取り組んでいる会社もたくさんありますので、将来をも見据えて少し違った着眼点で検討してみるのもいかがでしょうか。
- Q
- 未経験から治験コーディネーターへ転職するときに必要な資格が違うのはなぜ?
- A
-
大学病院や研究所で働いている多くの治験コーディネーターは、癌経験のある看護師や、薬理の知識が豊富な薬剤師の比率が高くなっています。なぜなら、大学病院や研究センターなどで行われている治験の多くは、癌や循環器などの高難易度疾患の領域だからです。そのため、高難易度疾患の治験を多く受託しているSMOは、治験コーディネーター未経験者を採用する場合、癌や循環器などの領域の経験がある看護師を好む傾向があります。
癌領域の経験がある看護師と病院で働いたことがない栄養士が、癌領域の治験に携わるために必要になる研修のスケジュールを比較してみましょう。
・癌領域の経験がある看護師
導入研修→病院でOJTを受ける→癌の治験に携わる
・病院で働いたことがない栄養士
導入研修→カルテ研修→生活習慣病の治験が行われている病院でOJTを受ける→生活習慣病の治験に携わる→癌領域の研修を受ける→癌の治験が行われている病院でOJTを受ける→癌の治験に携わる
このように癌の経験がある看護師のほうが、病院で働いたことがない栄養士よりも早く癌領域の治験に携わることができます。
つまり、癌や希少疾患の治験を多く抱えているSMOは看護師や薬剤師の優先順位が高くなり、癌や希少疾患の治験をあまり手がけていないSMOは看護師や薬剤師の優先順位が低くなります。
そのため、治験コーディネーター未経験者が応募するために必要な資格や経験に差がでるわけです。
ちなみに、現在のアンメットメディカルニーズ(まだに有効な治療法が確立されておらず、強く望まれているが、医薬品などの開発が進んでいない治療分野における医療ニーズ)の多くは癌です。そのため、現在の治験の主流は癌領域であり、多くの治験が積極的に行われています。そのため、今後、画期的な新薬(ブロックバスター)が続々と出てくることが期待されています。
以前、主流であった生活習慣病領域については、主な新薬の開発は終わっており、今後、画期的な新薬が出る余地は少ないと言われています。現在、進行している生活習慣病のパインプラインを見ても、現在の薬効とそれほど変わらない薬が多くなっています。
よって、癌や希少疾患の治験は有害事象の発生率が高く、対応に薬理や疾患の知識が必要になるため、看護師や薬剤師が重宝されるのに対して、生活習慣病などの治験は有害事象の発生率が低く、多数の症例を効率よくたくさん集める必要があるため、看護師や薬剤師でなくても対応できるわけです。
ただし、仮に無資格であったとしても治験コーディネーターの経験が豊富にあり、勉強熱心な方であれば、高難易度疾患の治験にも携われるようになれると思います。
- Q
- 中小企業のSMOのメリットは何?
- A
-
中小企業のSMOの主なメリットは主に以下の5つです。
1)早く出世できる
中小企業のSMOのほうが年功より能力で評価されやすいです。また、離職率が高いことも多いため、周囲よりも能力を発揮できれば大手SMOより早く、リーダーなどの裁量の大きな仕事に携われる可能性があります。そのため、中小企業のSMOは人事考課やマネジメントなどの業務を早く経験したい人に向いていると言えます。
ただし、リーダーなどに出世しても、年収は期待したほど上がらないことが多いようです。
2)成長を実感しやすい
中小企業のSMOは数年で会社の規模が倍近くに大きくなる可能性があります。社員が増えるにつれ、給与制度や福利厚生なども整っていくことが多く、自分だけでなく会社の成長も同時に実感できる機会があります。
ただし、必ずしも会社の規模が大きくならない場合もあるため注意が必要です。
3)経営者視点が身につく
中小企業のSMOに所属している治験コーディネーター(CRC)は、社長などの経営者と話す機会が多くあります。経営者が何を考えているのか、どのように会社を経営しているのかなどを学ぶことができます。その結果、経営者視点をもって働くことができるようになります。
ただし、経営者視点をもつことに興味がない場合は、そのような機会を活かすことができません。
4)濃厚な人間関係を構築しやすい
中小企業のSMOに所属している社員の数は多くありません。そのため、社員同士が親しくなりやすく、困ったときに助けあえる濃厚な人間関係を構築しやすいです。また、職場の雰囲気はドライではなくアットホームになりやすいです。
ただし、濃厚な人間関係が逆にストレスになることもあるため、人間関係に疲れやすい人は周囲と適切な距離を保ちながら働くことを意識されても良いでしょう。
5)医療資格がなくても応募できることがある
中小企業のSMOは給与が低く福利厚生も整っていない場合が多いです。そのため、看護師や臨床検査技師などの医療資格を所持されている方が、中小企業のSMOに転職されることはとても少なくなっています。
中小企業のSMOは看護師や臨床検査技師などの医療資格者をほとんど採用できないため、医療資格を所持されていない方を治験コーディネーター(CRC)として採用していることがあります。医療資格を所持されていない方は、そのような応募先を見つけて応募すれば、治験コーディネーター(CRC)へ転職できる可能性があります。