治験とは?

治験とは

治験コーディネーターの「治験」とはどのような意味なのかを知っていますか?

治験コーディネーター(CRC)になるためにはまず「治験」とは何かについて理解しておく必要があります。治験とは医薬品の承認のために必要なデータを揃える試験のことを言います。

具体的には製薬メーカーが開発した新薬を患者や健康な人に使用してもらい、データを収集して厚生労働省から薬として、有効性や安全性を確認し、承認をもらう為の試験のことです。

面接では治験について説明を求められることも多いので、こちらで事前に勉強しておきましょう。

治験治験とは?

治験コーディネーターの「治験」とはどのような意味でしょうか。

治験とは厚生労働省から「薬」として承認を受けるために、必要なデータをそろえる臨床試験。

薬ができるまで

新しい薬を開発するためには、動物で薬の候補物質の効果や毒性を調べるだけでなく、人での有効性(効き目)や安全性(副作用)を確認する必要があります。 人での有効性や安全性について調べる試験を一般に「臨床試験」と呼び、医薬品の承認のために必要なデータをそろえる臨床試験を「治験」と呼びます。

「治験」は厚生労働省が定めた厳しいルール(医薬品の臨床試験の実施の基準:新GCP)に従って行われます。 治験を行う医師が患者さんに「治験」についてきちんと説明を行い、患者さんが治験の内容をしっかりと理解した上で自らの考えで治験に参加することを同意(インフォームド・コンセント/IC)する必要があります。

では、以下でそれぞれの項目について解説をします。

新薬ができるまで 治験のながれ 治験の位置づけ 治験の成功確率 治験の領域 ドラッグ・ラグ、治験の空洞化 治験のルール 治験と治療の違い 治験参加のメリット インフォームド・コンセント

薬新薬ができるまで

新薬ができるまでには10年以上の長い開発期間200~300億円の費用がかかる

日本では毎年およそ40~50種類の新薬が誕生しています。 新薬の開発には10年以上もの長い開発期間と200~300億円もの費用がかかると言われています。最初にスクリーニングした物質が実際に薬となるのは、約6000分の1の確率と言われています。新薬は下記のようなプロセスを経て完成します。

基礎研究
(2~3年)
薬となる可能性がありそうな物質を自然界から探したり、科学的に作り出したりします。
最近はバイオテクノロジーの進歩によりコンピューターを使用して物質の立体構造を予測した上で、薬の候補を作ることができるようになってきました。
研究その物質が薬になるかどうかを、試験管の中で実験します。
前臨床試験
(3~5年)
動物で試験を行います。
試験ネズミやウサギ、イヌ、サルなどの動物を使って、薬の候補が動物の体内で、どのように吸収、分布、代謝、排泄されるかを調べます。そして、薬として期待される効き目があるかどうか、副作用はあるかなどを検討した上で、候補を絞り込んでいきます。
安全性試験の実施方法や記録については、その試験結果の信頼性を確保するためにGLP(ジーエルピー:Good Laboratory Practice)という実施基準が定めらています。日本では、「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」が厚生労働省から通達されています。
治験
(臨床試験)
人で試験を行います。
治験動物を用いた試験で効果と安全性が確認されたものだけが「新しい薬の候補」となり、人による臨床試験に入ります。これが「治験」です。詳しくは下記で説明しますが、治験コーディネーター(CRC)が深く関わる部分になります。

詳しくはこちら治験の流れ

厚生労働省の承認&新薬の市販
製造販売後
臨床試験
薬が市販された後に、より多くの患者様の治療で使われたときの効果や安全性を確認します。
調査治験とは呼びませんが、治験と同じような厳しい規則のもとで行われます。

治験治験の流れ

治験は下記の3つ(治験後に1つ)の段階があり、各段階で薬の安全性や有効性の確認を行います。

第一相試験
主に健康な男性を対象とした試験です。100人程度の健康な成人を対象に、ごく少量から少しずつ薬の候補物質の投与量を増やし、主に安全性について調べます。
動物で調べられていることであっても、人間を対象に再度調べることが必要です。動物では効いたにも関わらず人間ではさほど効かなかったり、逆に、動物ではあらわれなかった副作用が人間にあらわれるといったことが起こりえます。
人体による安全性が未確認であるため、通常は妊娠の可能性のある女性を避け、男性で行われます。
抗がん剤の第一相試験では被験者はがんの患者になります。
相生会臨床薬理センターやインクロム株式会社などの治験専門クリニックで行われることが多いです。治験は平日だけでなく、被験者の仕事が休みである土日にも行われます。
第二相試験
通常は200~300人の少数の患者さんを対象とした試験です。薬の候補物質が効果を示すと予想される比較的少人数の患者さんで、有効性、安全性、使い方(投与量・投与方法など)を調べます。
第三相試験の次に治験コーディネーター(CRC)が担当することが多い試験です。少数の大学病院などの総合病院と治験専門クリニックで行われます
国際共同治験の場合、海外のデータを使用することによって省略することができます。
第三相試験
大勢の患者さんを対象とした試験です。実際の治療に近い状況で薬の有効性、安全性、使い方を確認し、既存薬との比較を行います。
最近は国際的に何万人、何十万人規模の患者を対象に行われることも多くなっています。
プラセボ(偽薬)を使用してデータのかたよりを最小にする「二重遮へいランダム化比較試験」が行われることが原則です。
治験コーディネーターが担当するのは主にこの第三相試験です。 大学病院などの総合病院から専門クリニックまで多くの全国の医療機関で治験が行われます。
厚生労働省の承認&新薬の市販
第四相試験
(製造販売後
臨床試験)
厚生労働省の承認後に使用された薬の安全性を確認する試験です。GCP・GPSP省令に基づいて行われ「市販後臨床試験」とも呼ばれます。「市販後調査(PMS)」を通じて行われることが多いです。
治験とは言われません。
市販後調査(PMS)は新薬投与後の患者の状態を6ヶ月間に渡って調査する「市販直後調査」、治験の対象者とならなかった患者の有効性・安全性を調査する「特定使用成績調査」、長期的な使用実態を調査する「使用成績調査」に分類されます。製薬会社のMRやモニターが医師を訪問して情報を集めることが多いです。

治験の成功確率治験の位置づけ

人を対象とする医学的研究を「臨床研究」と言い、臨床研究のうち薬や治療法の効果や安全性を調べる試験を「臨床試験」と言う。臨床試験のうち医薬品や医療機器などを厚生労働省に承認してもらうために行う試験を「治験」と言う。

治験コーディネーター(CRC)が主に携わるのは「治験」ですが、「特定臨床研究」にも携わることが多いです。

携わっている業務範囲を明確に区別するために、治験に携わっている人を「治験コーディネーター」、臨床研究に携わっている人を「臨床研究コーディネーター」、臨床試験に携わっている人を「臨床試験コーディネーター」と呼び分ける場合があります。逆に業務範囲を区別しないときはコーディネーターの前に何もつけずに「コーディネーター」とだけ呼ぶこともあります。

治験コーディネーターと臨床研究コーディネーターの違いについて知りたい方はこちら

臨床研究・臨床試験・治験の違い

種類 内容 職種
臨床研究 患者様の病気の原因解明や治療の改善を行うための研究。患者様が直接研究に参加する「介入研究」と検査データや血液サンプルの提供などを依頼する「観察研究」に分類できる。市販後調査(PMS)も含まれる。 臨床研究コーディネーター
臨床試験 臨床研究のうち薬や治療法などの安全性と有効性を評価することを目的としたもの。製造販売後臨床試験(市販後臨床試験)も含まれる。 臨床試験コーディネーター
特定臨床研究 臨床研究のうち「製薬企業から資金提供を受けるもの」または「未承認薬(日本で承認されていない薬)あるいは、適応外薬(ある疾患に対しては承認されているが別の疾患への効能は承認されていない薬)を使うもの」・・・臨床研究法 臨床研究コーディネーター
治験 臨床試験のうち薬や医療機器などを厚生労働省に承認してもらうための試験。企業が主導する規模の大きな「企業治験」と、医師が主導する規模の小さな「医師主導治験」に分類できる。・・・薬機法、GCP省令 治験コーディネーター

治験の成功確率治験の成功確率

治験の成功確率は約8~10%

治験が成功する確率は約8~10%しかありません。つまり、残りの90~92%は失敗となります。

治験の各工程の成功確率は第1相が約65%、第2相が約43%、第3相が約42%、承認申請後に市販される確率が約75%となっています。

治験の成功確率

※成功確率は前臨床試験を終えた化合物を100とした場合
※成功確率はBiotechnology Innovation OrganaizationSteven M. Paul et. al., Nature Reviews Drug Discovery 9, 203-214 (March 2010)などの論文を参考にCRCばんくが独自に作成。

治験の成功確率治験の領域

治験が最も多く行われている領域はがん(オンコロジー)。コロナの影響でワクチンも増加。

治験が最も多く行われている領域はがん(オンコロジー)になります。従来の抗がん剤の他に分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など様々な種類が開発された結果、がん(オンコロジー)領域の治験数は10年で3倍以上と大きく増加しました。

薬物の治験計画届出件数の推移

PMDAより出典

ドラッグ・ラグドラッグ・ラグ、治験の空洞化

新薬の審査期間の短縮や国際共同治験の増加により多くのドラッグ・ラグが解消した結果、2010年代前半には治験の空洞化は相当に改善されましたが・・・。

2010年より前、日本の新薬の審査期間(審査ラグ)は主要国の中で最も長かったのですが、現在はトップクラスに短くなっています。実際にCIRSの調査では2009年時点の日本の新薬の審査期間は650日前後と長く、主要国のなかでは最下位でした。しかし、2010~2012年ごろにPMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査官が増員されるなどした結果、2014~2016年には最も短くなりました。

志望動機などに「治験コーディネーター(CRC)になってドラッグ・ラグ(審査ラグ)を解消したい」と書かれる人がいらっしゃいますが、ドラッグ・ラグ(審査ラグ)の問題はすでに大きく改善されているため、安易に書くことは控えましょう。

日本の治験開始が海外に比べて遅れる開発ラグも、2018年には海外の製薬メーカーと共同で治験を行う国際共同治験の割合が50%を越え、製薬メーカーが合併を繰り返すなどしてグローバル化が進んだ結果、治験の空洞化は相当に改善されました。

審査期間の推移

CIRS2019を参照。

国際共同治験の推移

ドラッグ・ラグ問題が再燃! 患者の少ない希少がんやゲノムやバイオといった先端分野で新たなドラッグ・ラグと言われる「ドラッグ・ロス問題」が深刻化しています。

2010年代後半から一旦は解消に向かったドラッグラグ再び問題化しつつあります。原因は薬価制度の見直しが繰り返されたことにより日本の新薬開発市場の魅力が失われた結果、患者の少ない希少がんやゲノムやバイオといった先端分野において、日本で新薬が開発されないケースが増加しているからです。

特に最も開発数の多い抗癌剤について新興企業品目の増加により、日本を治験に組み入れないことによるドラッグラグ(ドラッグロス)が増加しています。実際に2016~20年までの抗癌剤の国内未承認薬数は米FDA承認60品目に対し41品目と68%にも上っています。また、未承認41品目のうち約半数の22品目はバイオベンチャーなどの新興企業の品目になっています。(出典:ドラッグ・ラグ:なぜ、未承認薬が増えているのか?

国別の未承認薬の割合

※2010~2021年の481品目を対象 ドラッグ・ラグ:日本と欧州の未承認薬状況の比較より出典。

企業別の国内承認率の比較

GCP治験のルール

治験は厳しいルール(新GCP)のもとで行われる

治験実施にあたっては、治験に参加される方の人権と安全性が最大限守られなければなりません。そのため、「薬機法(旧薬事法)」という法律と厚生労働省が定めている厳しいルール(医薬品の臨床試験の実施の基準:新GCP)によって、治験実施に関する厳格なルールが規定されています。主なルールは以下になります。

CHECK治験を実施するときのルール

  • 治験の内容を国に届け出ること
  • 治験審査委員会で治験の内容を前もって審査すること
  • 同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること
  • 重大な副作用は国に報告すること
  • 製薬会社は治験が適正に行われていることを確認すること

別の記事でも詳しく説明していますので、さらに知りたい方はそちらもご覧ください。

詳しくはこちら新GCPについて

クエスチョンマーク治験と治療の違い

治験治療は違う

治験と一般の治療は何が違うのでしょうか。下記にまとめましたので、頭の中を整理しておきましょう。

治験 治療
厚生労働省の承認がとれていません。※プラセボを除く 使用される薬 厚生労働省の承認がとれています。
試験を主な目的としますが、治療的な側面を持つこともあります。※プラセボを除く 薬を飲む目的 治療を目的として飲みます。
患者さんが希望しても、指定の病院以外受けることができません。 病院 患者さんが希望する病院であれば、どこでも治療を受けられます。
治験担当医師(複数の場合もあります)が一貫して診察します。治験担当医師以外が診察することはありません。 医師 主治医以外の医師が診察することもあります。
一般の治療より長くなります。 診察時間 一般的には短時間です。
一般の治療より、きめ細かな検査が行われます。 検査内容 健康保険の適用範囲内で行われます。

マル治験参加のメリット

治験参加のメリット

治験は参加する方の「本人の自由意志」に基づいて行われますが、治験に参加した場合のメリットしては、治験内容や医療機関の体制によって多少の違いはあるものの、およそ次のようなことがあげられます。

CHECK治験に参加するメリット

  • これまでにない新しい治療を受けるチャンスがあります。
  • 経験豊富な治験担当医師による丁寧な診察を受けることができます。
  • 一般の診療に比べ、よりきめ細かい検査が行われるため、ご自身の病気の状態を詳しく知ることができます。
  • 治験薬の費用や、治験中の検査費用は支払う必要がありません。

そして、何よりもかけがえのないことは、「次の世代により良い薬を残すために協力する」という社会貢献ができることです。

iインフォームド・コンセント

インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは、治療を受ける前に「自分の病気のことやその治療方針について医師等から十分説明を受け、患者さんが説明の内容をよく理解し納得した上で、患者さん自身の意思で治療を受けることに同意する」という意味です。

インフォームド・コンセントは一般の治療でも行われていますが、治験には試験的な側面があるため、参加される方の人権を尊重し安全性を守る、という点からも欠かすことのできない手続きとなっています。 インフォームド・コンセントで説明を受ける主な内容は以下になります。

CHECKインフォームド・コンセントで説明を受ける主な内容

  • 治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加する期間
  • 期待される効果と予想される副作用
  • 治験への参加はいつでもやめることができ、不参加の場合でも不利益は受けないこと
  • 副作用が起きて被害を受けた場合、補償を請求できること
  • 担当する医師の氏名、連絡先
  • 治験に関する質問、相談のための問い合わせ先

別の記事でも詳しく説明していますので、さらに知りたい方はそちらもご覧ください。

詳しくはこちらインフォームド・コンセントとは

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