治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格や、治験コーディネーター(CRC)の認定資格の種類やメリットについて解説します。治験コーディネーター(CRC)の資格に興味がある方はぜひ参考にしてください。
まず、治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格についてです。治験コーディネーター(CRC)の約4人に1人は看護師(保健師や准看護師を含む)または臨床検査技師の資格を所持しています。そして、約10人に1人は薬剤師または管理栄養士(栄養士を含む)の資格を所持しています。
次に、治験コーディネーター(CRC)の認定資格です。治験コーディネーター(CRC)の認定資格は複数の団体が提供しており、それぞれに特徴があります。
CRCが所持する医療資格とCRC認定資格
治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格
治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格
- 最も多い
- 看護師(保健師、准看護師を含む)、臨床検査技師
- 多い
- 薬剤師、管理栄養士(栄養士を含む)
- 少ない
- 臨床工学技士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、歯科衛生士、MR、CRAなど
治験コーディネーター(CRC)の約4人に1人は看護師(保健師や准看護師を含む)または臨床検査技師を所持しています。
看護師は患者様とのコミュニケーション力や豊富な症例の知識を、臨床検査技師は検査データを判読するスキルを治験コーディネーター(CRC)として活かすことができます。
また、治験コーディネーター(CRC)の約10人に1人は薬剤師または管理栄養士(栄養士を含む)を所持しています。薬剤師は豊富な薬物知識を、管理栄養士は他部署との連携能力や生活習慣病・消化器系疾患に関する知識を活かすことができます。
他には、臨床工学技士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、歯科衛生士、MR、CRAなどの医療資格を所持している方もいます。
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SMOのCRCと院内CRCの医療資格の比率
SMOの医療資格の比率の推移
※JASMOデータ2009、2023より出典。
※多くの無資格者は、理系大学を卒業した後すぐに治験コーディネーター(CRC)になっていると考えられる。
院内CRCの医療資格の比率の推移
※JCOG CRC実態調査2006、2018より出典。
※多くの無資格者は、サポート業務に携わっている非正規職員であると考えられる。
- この10年で、医療資格を持たない治験コーディネーター(CRC)の数は約4倍に増加しました。その背景には、治験を行うための体制やマニュアルが整備されたことや、SMOが医療資格を持たない理系の学生を新卒で採用して治験コーディネーター(CRC)に育成するようになったこと、院内CRCの非正規職員の割合が6割を超えるまでに増加したことなどがあります。
- SMOでは臨床検査技師、院内CRCでは薬剤師の割合が高いです。
企業別の医療資格の比率
企業別の医療資格の比率
※各SMOの2015年、2017年、2019年、2021年、2022年のデータを参照。
- 看護師の比率が高いのは、EPLink、シミックヘルスケア・インスティテュート、ノイエスの3社です。EPLinkでは、がんなどの高難易度疾患の治験が多いため、看護師出身の治験コーディネーター(CRC)が多く在籍しています。
- 臨床検査技師の比率が最も高いのはEPLinkです。その理由は、EPLinkの前身である綜合臨床サイエンスにおいて、臨床検査技師の比率が60%以上と高かったことによります。
- 薬剤師の比率が高いのはアイロムIRです。多くの薬剤師は新卒で入社しています。
医療資格に関連する質問と回答
- Q
- 治験コーディネーターに医療資格は必要でしょうか?
- A
-
私は医療系資格持っていませんが、現在幅広い疾患を担当しています。周りには、同じく無資格のコーディネーターもいます。
研修制度が充実している会社を選び、勉強する姿勢があれば、あまり気にする必要はないのではないかと思います。
また、周りにはもちろん、有資格者のコーディネーターもたくさんいて、それぞれの経験談やスキルを共有できたりすることで、向上心も高まるのではないかと思います。ですので、制度や職場環境で会社を選んでみてはいかがでしょうか?
事務仕事が得意でマナーを心得ているとのことですので、質問者さんの得意分野も生きると思いますよ^o^
- Q
- 未経験から治験コーディネーターへ転職するときに必要な資格が違うのはなぜ?
- A
-
大学病院や研究所で働いている多くの治験コーディネーターは、癌経験のある看護師や、薬理の知識が豊富な薬剤師の比率が高くなっています。なぜなら、大学病院や研究センターなどで行われている治験の多くは、癌や循環器などの高難易度疾患の領域だからです。そのため、高難易度疾患の治験を多く受託しているSMOは、治験コーディネーター未経験者を採用する場合、癌や循環器などの領域の経験がある看護師を好む傾向があります。
癌領域の経験がある看護師と病院で働いたことがない栄養士が、癌領域の治験に携わるために必要になる研修のスケジュールを比較してみましょう。
・癌領域の経験がある看護師
導入研修→病院でOJTを受ける→癌の治験に携わる
・病院で働いたことがない栄養士
導入研修→カルテ研修→生活習慣病の治験が行われている病院でOJTを受ける→生活習慣病の治験に携わる→癌領域の研修を受ける→癌の治験が行われている病院でOJTを受ける→癌の治験に携わる
このように癌の経験がある看護師のほうが、病院で働いたことがない栄養士よりも早く癌領域の治験に携わることができます。
つまり、癌や希少疾患の治験を多く抱えているSMOは看護師や薬剤師の優先順位が高くなり、癌や希少疾患の治験をあまり手がけていないSMOは看護師や薬剤師の優先順位が低くなります。
そのため、治験コーディネーター未経験者が応募するために必要な資格や経験に差がでるわけです。
ちなみに、現在のアンメットメディカルニーズ(まだに有効な治療法が確立されておらず、強く望まれているが、医薬品などの開発が進んでいない治療分野における医療ニーズ)の多くは癌です。そのため、現在の治験の主流は癌領域であり、多くの治験が積極的に行われています。そのため、今後、画期的な新薬(ブロックバスター)が続々と出てくることが期待されています。
以前、主流であった生活習慣病領域については、主な新薬の開発は終わっており、今後、画期的な新薬が出る余地は少ないと言われています。現在、進行している生活習慣病のパインプラインを見ても、現在の薬効とそれほど変わらない薬が多くなっています。
よって、癌や希少疾患の治験は有害事象の発生率が高く、対応に薬理や疾患の知識が必要になるため、看護師や薬剤師が重宝されるのに対して、生活習慣病などの治験は有害事象の発生率が低く、多数の症例を効率よくたくさん集める必要があるため、看護師や薬剤師でなくても対応できるわけです。
ただし、仮に無資格であったとしても治験コーディネーターの経験が豊富にあり、勉強熱心な方であれば、高難易度疾患の治験にも携われるようになれると思います。