臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)に転職する際の注意点を、3つのステップに分けて詳しく解説します。
臨床検査技師は医療現場で培ったスキルや知識を活かして、治験コーディネーター(CRC)に転職することができます。しかし、その一方で注意すべきポイントもあります。
この記事では、治験コーディネーター(CRC)に必要とされる適性、適切な転職先の選び方、面接の対策など、臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)への転職を成功させるために必要な情報をお伝えします。臨床検査技師の方々は、この記事を参考にして、治験コーディネーター(CRC)への転職活動を成功させましょう。
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CRCに適性がある臨床検査技師とは?
臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)として活躍するためには、①高いコミュニケーション力、②高いストレス耐性、③人と一緒に仕事をすることが好き、④臨床検査技師の仕事から離れることに抵抗がない、という4つの条件を満たす必要がある。
治験コーディネーター(CRC)への転職を考えている臨床検査技師は、現在の仕事に不満を抱えている方が多いと思われます。そのため、「臨床検査技師よりも治験コーディネーター(CRC)の方が自分に向いている」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、臨床検査技師は看護師や薬剤師と比べて、治験コーディネーター(CRC)への転職は慎重に判断する必要があります。なぜなら、臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)として活躍するためには、さまざまな条件を満たす必要があるからです。
ただ単に現状の不満から焦って治験コーディネーター(CRC)へ転職してしまうと、将来のキャリアに負の影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるために、この記事では、治験コーディネーター(CRC)として活躍するために必要な4つの条件を解説します。
高いコミュニケーション力と高いストレス耐性を併せ持つ臨床検査技師は少ない 臨床検査技師によく見られる勘違い 長期的なキャリアを考える
高いコミュニケーション力と高いストレス耐性を併せ持つ臨床検査技師は少ない
治験コーディネーター(CRC)は、治験がスムーズに進むように、さまざまな関係者と調整を行う仕事です。そのため、会話力や調整力といった高いコミュニケーション力と、異なる意見にも屈せずに複数の関係者を治験の成功に向かって粘り強くまとめていける高いストレス耐性が必要とされます。
しかし、高いコミュニケーション力とストレス耐性を両立させる臨床検査技師は少ないのが現実です。これには2つの主な理由があります。
第一に、コミュニケーション力やストレス耐性に自信がない方が臨床検査技師の進路を選ぶ傾向があるからです。看護師などではなく、臨床検査技師を選んだ理由は、「人と関わる仕事よりも、検査や分析のようなコツコツとした業務のほうが好きだから」という声が多いです。コミュニケーション力やストレス耐性に自信がある方で臨床検査技師の進路を選ぶ方は少数派です。
第二に、臨床検査技師の業務では、高いコミュニケーション力や高いストレス耐性を求められる場面は少ないからです。例えば、検体検査では長時間、誰とも会話をせずに作業を行うこともあります。人との関わりが多い生理機能検査でも、一人の患者様との対話は1~10分程度と短いことが多いです。そのため、臨床検査技師の業務を通して高いコミュニケーション力を身につけることは容易ではありません。
検体検査では、単調な業務を長時間続ける必要があるため、そのような環境に対するストレス耐性は身につきます。しかし、異なる意見を調整する際に必要なストレス耐性を身につけられる機会は限られています。
その結果、治験コーディネーター(CRC)に必要な高いコミュニケーション力と高いストレス耐性を併せ持つ臨床検査技師は少なくなります。
臨床検査技師によく見られる勘違い
治験コーディネーター(CRC)への転職を検討される臨床検査技師の方の中には、コミュニケーション能力やストレス耐性に自信がある方もいらっしゃるでしょう。しかし、それだけでは、治験コーディネーター(CRC)に適性があるかどうかは判断できません。
臨床検査技師は、コミュニケーション能力やストレス耐性が低い方が多い傾向があります。そのため、同じ臨床検査技師と比べてコミュニケーション力やストレス耐性に自信があるからといって、治験コーディネーター(CRC)に適性があるとは断定できません。
治験コーディネーター(CRC)に適性があるかどうかを判断するには、周囲の臨床検査技師ではなく、看護師や管理栄養士、薬剤師などの他の医療職種と比べてもコミュニケーション力やストレス耐性に自信があるかどうかを見極める必要があります。
長期的なキャリアを考える
臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)へ転職する場合、看護師や薬剤師とは異なり、将来的に病院や検査センターで再び臨床検査技師として働くことが難しくなる可能性が高いです。
なぜなら、常に人手不足の状態にある病棟看護師や調剤薬剤師と違い、臨床検査技師の転職市場は応募者の方が多く競争倍率が高いからです。
治験コーディネーター(CRC)として勤務した期間は、臨床検査技師としてはブランクとみなされることが多く、治験コーディネーター(CRC)として一度就業すると、再び臨床検査技師として働くことが難しくなる可能性があります。
転職先(SMO・病院)の選び方
臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)として働くSMO・病院を選ぶ際には、①臨床検査技師の割合、②難易度の低い疾患領域の治験実績、③教育研修制度の充実の3つの基準で応募先をチェックする。
臨床検査技師が治験コーディネーター(CRC)として働くSMO・病院を選ぶ際には、「臨床検査技師の割合」「難易度の低い疾患領域の治験実績」「教育研修制度の充実」の3つの基準で転職先をチェックすると、自身に適した職場を見つけやすくなります。
多くの臨床検査技師出身の治験コーディネーター(CRC)が活躍しており、難易度の低い疾患領域の治験を多く手がけており、さらには教育研修制度が充実している職場を見つけることができれば、それらはあなたにとって理想的な転職先になります。
臨床検査技師出身の治験コーディネーター(CRC)の割合をチェックする
治験コーディネーター(CRC)のうち、臨床検査技師出身者がどの程度の割合を占めているかを、公式ホームページなどで確認しておくことが大切です。
その理由は、臨床検査技師出身の治験コーディネーター(CRC)が多く活躍している職場であれば、働きやすさが高まる可能性があるからです。臨床検査技師出身者が多いと、仕事内容や人間関係について相談しやすくなります。また、同じ目線でサポートしてもらえる可能性も高くなります。
たとえば、同僚や上司が臨床検査技師出身であれば、「大量の検体を処理するのが大変だったよ」「臨床検査技師は雑用を頼まれることが多いよね」「CRCに転職して給与は上がった?」「超音波検査の経験はある?」などの会話ができます。
このような共通の経験を通じて、初対面でも打ち解けやすく、余計な気遣いなしに業務に取り組める可能性が高くなります。
難易度の低い疾患領域の治験実績をチェックする
がん(オンコロジー)や循環器などの難易度が高い疾患領域の治験において、臨床検査技師は看護師ほど相性が良いとは言えません。
その理由は、臨床検査技師は重篤な疾患で患者様が亡くなるような状況に対応する経験が少ないためです。そのため、最初からそのような治験を担当することになった場合、業務に適応できずに早期に退職する可能性が高まります。
臨床検査技師が初めて担当することが多い領域としては、内分泌代謝系の糖尿病や、心理・神経系のアルツハイマー病やうつ病、アレルギー疾患などが挙げられます。したがって、転職先のSMO・病院がこれらの領域で十分な治験実績があるかどうかを事前に調べておくことが重要です。
臨床検査技師として、まずは難易度の低い疾患領域の治験を確実に対応できるようになることを目指すのも良いと思います。
教育研修制度をチェックする
臨床検査技師は、看護師と比べて治験コーディネーター(CRC)として一人前になるまでに時間がかかると言われています。そのため、導入研修に加えて、その後のOJTや定期的な研修がどのように行われているかも確認しておきましょう。
企業名 | 教育研修制度 |
EPLink | インターネットを使用したeラーニングの種類が豊富なことが特徴。人材開発グループに専任スタッフ、各支店・事業所に教育研修担当者を配置。 |
シミックヘルスケア・インスティテュート | 導入研修の期間は約2~3週間と長い。その後も各種勉強会・事例検討会・国内外学会参加を定期的に開催している。 |
ノイエス | 導入研修の期間は約2~4週間と最も長い。eラーニングも積極的に活用。その後は提携先の医療機関でOJT(現場での教育)中心。英語研修などグローバルに活躍できるCRCを育成。 |
アイロムIR | 導入研修の期間は約3~5日間。その後はOJT(現場での教育)中心。1~2ヶ月に一度、定期的に本社でフォローアップ研修を開催。 |
アイロム | 新卒などCRC未経験者の教育に定評あり。独自のCRC社内認定制度を設定。オーストラリアへの短期ビジネス留学も可能。 |
また、SMO・病院の規模が大きいと、教えてもらえる先輩もたくさんいることになり、臨床経験が少ない臨床検査技師さんでも安心して治験コーディネーター(CRC)の業務を覚えられる確率が高くなります。
初年度の年収・給与にこだわりすぎない
SMOや病院によっては、臨床検査技師の年収・給与が看護師よりも低くなっている場合があります。
治験コーディネーター(CRC)として活躍できるようになると、給与差はほとんどなくなります。臨床経験が豊富な臨床検査技師であれば、入社時から看護師と同等の年収・給与を得られるSMOや病院を選ぶことを重視しても良いでしょう。
一方、臨床経験が浅い臨床検査技師は、最初から年収・給与ばかり気にするよりも、治験コーディネーター(CRC)の仕事をしっかりと学べる環境を優先して転職先を探したほうが、転職に失敗するリスクを減らすことができます。
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臨床検査技師からCRCへ転職したときの年収
※292名のCRCばんくのクチコミ・アンケート調査データをもとに作成(調査期間:2015年4月~2024年11月、有効回答数:N=292)。(残業代は除く)
臨床検査技師とCRCの年収比較
※292名のCRCばんくのクチコミ・アンケート調査データをもとに作成(調査期間:2015年4月~2024年11月、有効回答数:N=292)。
※臨床検査技師は2022年の賃金構造基本統計調査を独自に加工して作成。
しかし、あなたが既に豊富な臨床検査技師としての実績を積んでいる場合には、最初から年収・給与についてもしっかり調べておく必要があります。
面接の対策
治験コーディネーター(CRC)の仕事内容をノートや資料を見ずに、3分間程度で説明できるようにしておく。加えて、面接の基本的な7つのポイントをすべて押さえる。
コミュニケーション力に自信がない臨床検査技師にとって、治験コーディネーター(CRC)の転職活動における最大の難関は面接です。
コミュニケーション力に自信がない臨床検査技師でも内定を勝ち取るためには、どのような面接の対策をすればよいか説明します。
面接ではやる気をアピールする
治験コーディネーター(CRC)の面接で評価される要素は、簡単に言えばコミュニケーション力とやる気の両方が半分ずつだと言えます。
残念ながら、コミュニケーション力はすぐに身につくものではありません。したがって、治験コーディネーター(CRC)の面接の準備をする際に、コミュニケーション力を向上させるために十分な時間をかけることは、あまり効果的ではありません。
しかし、やる気をアピールできるようになるためには、それほど時間がかかりません。面接官に「この応募者は治験コーディネーター(CRC)の仕事内容について、他の人よりもしっかりと勉強してきた」という印象を与えることができれば、確実にやる気が高いと評価されます。
声を大きくして「頑張ります!」と述べても、元気があるという評価は得られますが、やる気が高いという評価は得られません。面接で高いやる気をアピールするためには、治験コーディネーター(CRC)の仕事内容について、他の人よりも詳しく知っておくことが必要です。
「CRCの仕事内容についてよく勉強している」と評価される方法
治験コーディネーター(CRC)の仕事内容について、面接官に「よく勉強しているね」と評価されるためには、どのような対策をすればよいでしょうか?
学生時代を振り返ってみてください。テストの成績を向上させるために、どのような努力をしましたか?そうです、暗記です。治験コーディネーター(CRC)の仕事内容について「よく勉強しているね」と評価されるためには、治験コーディネーター(CRC)の仕事内容を細部まで暗記することが必要です。
具体的な目安としては、治験コーディネーター(CRC)の仕事内容をノートや資料を見ずに、3分程度で説明できるようになることを目指しましょう。さらに、《CRCばんく》の治験用語集ページの星4以上の用語についても、説明できるようになれば万全です。
もし、治験コーディネーター(CRC)の仕事内容を1分未満でしか説明できなかったり、《CRCばんく》の治験用語集ページの星4以上の用語について曖昧な説明しかできない場合は、面接官から「他の応募者よりもやる気が高い」と評価されることは難しいかもしれません。
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コミュニケーションの基本を見直す
次に、コミュニケーション力を向上させる方法を考えましょう。コミュニケーション力は、先ほど述べたように、すぐに身につくものではありません。では、どうすればよいでしょうか。
それは、すでに身についているコミュニケーション力を、面接で確実に発揮できるように準備することです。
すでに身についているコミュニケーション力ですから、難しいことではありません。しかし、日常生活では必要性を感じずに忘れていたり、実践していなかったりすることがあるかもしれません。それらを見直して、面接で実践できるようにしておきましょう。
具体的には以下の7項目です。
面接の基本7項目
- 1.
- 服装や髪型、メイクは清潔感があるものにする
- 2.
- 「よろしくお願いします」「こんにちは」「ありがとうございました」などの挨拶を忘れない
- 3.
- お辞儀は丁寧にする
- 4.
- 相手の目を見て話す
- 5.
- 相手の話を聞くときは、うなずきや相槌で反応を示す
- 6.
- 笑顔を意識する
- 7.
- 明るく振る舞う
これらは基本中の基本ですが、実践できていない方も多いです。面接では緊張してしまうかもしれませんが、自然にできるように練習しましょう。練習でできなければ、本番でもできません。練習の段階から本番と同じように振る舞うことが大切です。
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- CRCの面接で求められるコミュニケーション力